DREAM ARCHIVE

あと5分

朝、目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた。

部屋はまだ薄暗い。カーテンの隙間から入る光も、起きろというほど強くはなかった。

枕元のスマートフォンを見る。

6時59分。

あと1分だけ寝ようと思った。

そう思った瞬間、サイドテーブルの上の目覚まし時計が小さく鳴った。

ピ。

それきりだった。

いつものアラームは、もっとしつこい。止めるまで鳴り続け、止まったと思ったら少し間を置いて戻ってくる。

画面には、見慣れない文字が出ていた。

「あと5分」

ぼくは布団の中で笑った。

それはこっちの台詞だと思った。

時計の上には、スヌーズボタンがある。けれど、ぼくは触っていない。

5分後、目覚まし時計がもう一度小さく鳴った。

画面には、さっきより少し小さな文字が出ていた。

「もう少しだけ」

もう少しって、どのくらいだろう。

そんなことを考えていたが、そろそろ起きることにした。

時計は数字の点をゆっくり点滅させていた。眠っているように見えなくもない。

7時10分。

そろそろ本気で鳴ってもらわないと困る。

ぼくは指で時計の横をつついた。

画面に文字が浮かぶ。

「起こす側にも準備があります」

なるほど、と思った。

毎朝、ぼくは何も準備せずに起こされている。起こすほうに準備があるとは、考えたことがなかった。

洗面所で顔を洗い、台所で湯を沸かした。パンを焼いているあいだも、目覚まし時計は鳴らなかった。

コーヒーを飲み終えて、スマートフォンを見ると、思ったより時間が過ぎていた。

その瞬間、寝室から急に大きな音がした。

ピピピピピピピ。

慌てて見に行くと、時計はいつもの調子で鳴っていた。画面には7時の表示が出ている。

「起きてください」

ぼくはもう起きている、と言って止めた。

時計はしばらく黙っていた。

それから、小さく表示が変わった。

「助かります」

夜、眠る前に、目覚まし時計を確認した。

アラームはいつもどおり7時に設定されている。

画面を見ると、数字の下に小さな文字が出ていた。

「明日は起きます」

ぼくは少し迷ってから、いつもは鳴らさないスマートフォンのアラームを6時59分に設定した。

それを、目覚まし時計の隣に置いた。