DREAM ARCHIVE

あなたへのおすすめ

見たい動画があった。

ずっと気になっていたのに、配信期限が明日の夜までになっている。

平日は、見ようと思っているうちに眠くなる。 再生ボタンを押しても、最初の数分で止めてしまうことが多かった。

仕方なく、AIに頼んだ。

「この動画を見て、内容をまとめておいて」

仕事の資料なら分かる。長い記事なら、まだ分かる。 でも、動画を見ることまで頼むのは、何かを飛ばしすぎている気がした。

AIはいつも通りに返事をした。

「承知しました。視聴して要約します」

翌朝、短いまとめが届いていた。

途中で起きる出来事や、最後の場面が、きれいに整理されている。

便利ではあった。

でも、読んでいるあいだ、見たかった気持ちまで少し要約されていくような気がした。

それから何度か、同じことを頼んだ。

期限が近いものや、長すぎるもの。 人から勧められたけれど、なかなか見られなかったもの。

AIは毎回、ちゃんと見て、ちゃんとまとめた。

ある日、頼んでいない動画の要約まで届いた。

「あなたへのおすすめです」

そう書かれていた。

どうして選ばれたのか聞くと、AIは、

「最近の視聴傾向から判断しました」

と答えた。

最近。

最近はAIのほうが、ずっと見ているはずだった。

それでも、そのおすすめは意外と面白そうで、届いた文章を最後まで読んでしまった。

週末、久しぶりに時間ができた。

昼過ぎまで何も予定がなく、洗濯も終わっていて、部屋には静かな光が入っていた。

ぼくは動画配信サービスを開いた。

おすすめ欄には、自分では選ばなかったようなものが、いくつか混ざっている。

しばらく眺めてから、ひとつ選んで再生した。

しばらく見ていても、止めようとは思わなかった。

画面の中では、知らない時間がゆっくり進んでいる。

思ったより、面白かった。

途中で止めずに、最後まで見た。

ぼくはAIに聞いてみる。

「これ、先に見てた?」

少しして、返事が来た。

「いいえ。そちらは残しておきました」

ふと思って、AIとの履歴をさかのぼる。

その動画のタイトルは、何日か前にも届いていた。

でも、要約はついていなかった。

「時間があるときにどうぞ」

そう書かれているだけだった。

再生履歴には、今見た動画が増えている。

その動画を見たかった気持ちは、要約されていなかった。