DREAM ARCHIVE

本日の替え玉

夜、用事を済ませた帰りに、ラーメン屋に入った。

昼を食べそこねていたので、券売機の前に立っただけでお腹が鳴りそうだった。

店内は湯気で少し曇っていた。 カウンターの奥で、麺を上げる音がした。

食券を渡すと、店員が短くうなずいた。

しばらくして、ラーメンが出てきた。

湯気の中に、細い麺が沈んでいる。 スープの表面に、小さく油が光っていた。

一口目で、体が少し静かになった。

麺は固めで、スープは思ったより熱い。 空腹だったので、ほとんど何も考えずに食べた。

気づくと、麺だけがなくなっていた。

スープはまだ残っている。

少し迷って、替え玉を頼んだ。

店員はカウンター越しに、

「本日の替え玉ですね」

と言った。

普通の替え玉と何が違うのか分からなかったけれど、聞き返すほどでもなかった。

小さな皿に、白い麺がのって出てきた。

丼に入れる。

箸でほぐすと、スープの中から、今日の午後が少しだけ上がった。

ぼくは手を止めた。

湯気の奥に、昼のスマートフォンの画面が見えた気がした。

返すつもりだった短い返信。

文面まで考えていたのに、あとで送ろうと思って閉じた。

麺をすする。

その一文が、まだ送られないまま喉を通った。

次の一口では、鞄の中の封筒を思い出した。

出かける前に、駅前のポストへ入れるつもりだった。

角が少し折れたまま、まだ鞄に入っている。

替え玉は、すぐになくなった。

スープもだいぶ減っている。

会計を済ませ、レシートを受け取った。

本日の替え玉 持ち帰り

外に出ると、通りはさっきと同じ夜だった。

改札へ向かう途中に、赤いポストがあった。

鞄を持ち直すと、中で封筒がかさりと鳴った。