順番待ち
朝、鍵が見つからなかった。
いつも置く場所にはなかった。
玄関の小皿、机の上、鞄の中。ありそうな場所は見たけれど、どこにもない。
急いでいる時ほど、物は見つからない。
財布、ボールペン、ノート、傘。
出てくるのは、今は必要ないものばかりだった。
仕方なく、机の引き出しから予備の鍵を出した。
ほとんど使ったことがないので、少し明るい色をしている。
玄関で靴を履いていると、スマートフォンに通知が来た。
見慣れない通知だった。
探し物の順番を整理しています
下に、さらに小さく続いている。
現在 3番目
通知を押しても、アプリは開かなかった。
ただ、細い待機列のようなものだけが残っている。
1番目、イヤホン。
2番目、本。
3番目、鍵。
どういう意味だろうか。
今はイヤホンも本も探していない。
必要なのは鍵だった。
そう思いながら、予備の鍵で玄関を閉めた。
昼、電話会議があった。
始まる前にイヤホンを探した。
いつも鞄に入れているはずなのに、内側の仕切りにも底のほうにもない。
少し迷ってから、イヤホンなしで参加することにした。
その時、上着のポケットに何かが入っていることに気づいた。
イヤホンだった。
すぐにそれをつけて、会議に参加した。
そのあと、スマートフォンに通知が来た。
現在 2番目
夕方、電車が遅れた。
ホームのベンチに座って、スマートフォンを見た。
電池は少なかった。
鞄を開けると、クリアファイルのあいだに何かが挟まっていた。
取り出すと、本だった。
しおりは、思っていたより先のページに挟まっている。
電車が来るまでのあいだに、数ページだけ読んだ。
また、スマートフォンに通知が来た。
現在 1番目
なるほど、次は鍵だった。
朝見つからなかった、いつもの鍵。
夜、駅からの道を少し早足で歩いた。
玄関の前に立つ。
上着のポケットを探す。
鞄を開け、クリアファイルのあいだを探す。
それから底のほうまで手を入れた。
いつもの鍵は出てこなかった。
代わりに、予備の鍵が手に触れた。
スマートフォンの画面が点いた。
すべての探し物が見つかりました
ぼくはしばらく、予備の鍵を見ていた。
それから鍵穴に差して、玄関を開けた。
部屋に入って、玄関の小皿にその鍵を置く。
いつもの鍵の場所だった。
画面には、もう何も表示されていない。
小皿の上で、予備の鍵だけが少し明るかった。