DREAM ARCHIVE

ノイズキャンセリング

休日の昼に、川沿いを散歩した。

少し歩いてから、ベンチに座った。

休むついでに、イヤホンで音楽を流す。

水筒のふたを開け、ひと口飲む。

向こう岸の木が、風で少し揺れていた。

何か考えごとをしていたのだと思う。

しばらくして、音楽がずいぶん遠くで鳴っていることに気づいた。

聞こえないわけではない。

代わりに、川の浅いところを水が通る音がよく聞こえた。

風が吹くたび、向こう岸の木の葉が細かく鳴った。

イヤホンの調子が悪いのかと思って、スマートフォンを開く。

ノイズキャンセリングは、オンになっていた。

逆ではないかと思った。

試しにオフにする。

音楽が普通に聞こえた。

川の音も、葉の音も聞こえている。ただ、イヤホン越しの外側にあった。

もう一度、オンにする。

音楽が遠くへ下がる。

車道の音も薄くなる。

川の音が残る。

木の葉の音が残る。

確かに、今はこっちの方が心地よかった。

ぼくは音楽を止めた。

イヤホンを外す。

遠くの車の音が戻ってきた。

誰かの話し声も、風に混じって聞こえる。

それでも、川の音は川の方から聞こえた。

木の葉の音も、ちゃんと向こう岸にあった。

しばらく、そのまま座っていた。